2025.9.16

LTV(顧客生涯価値)とは?重要性や、計算方法、最大化のポイントを解説!

SaaSビジネスをはじめ継続課金モデルを採用する企業では、企業の持続的な成長を測る指標として「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」の重要性が増しています。LTVとは、一人の顧客が自社との取引を開始してから終了するまでの全期間にもたらす利益の総額を示す指標です。

一度きりの売上ではなく、リピート購入やアップセル、クロスセルといった顧客との長期的な関係性から生まれる価値を可視化することで、事業の収益性を正確に把握し、データに基づいた戦略的な意思決定を下すことが可能になります。

本記事では、LTVの基本的な概念から、事業フェーズやモデルに応じたLTVの計算方法、そしてLTVを最大化し事業成長を加速させるための具体的な戦略までを、網羅的に解説します。


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目次
LTV(顧客生涯価値)とは?
SaaSビジネスではなぜLTVが最重要指標なのか?
LTVの計算方法
LTVを最大化するための5つのポイント
「Scalebase」で実現するデータドリブン経営


LTV(顧客生涯価値)とは?

LTVは、「顧客生涯価値」と訳され、一人の顧客(または一社)が、自社との取引を開始してから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)にもたらす利益の総額を示す指標です。

単発の売上ではなく、顧客との継続的な関係性の中に生まれる総利益を測る点が最大の特徴です。LTVが高い顧客とは、単に高額な商品を購入する顧客だけでなく、長期間にわたってサービスを継続利用し、時にはより上位のプランへアップグレードしてくれる「ロイヤルティの高い顧客」を指します。こうした顧客は、企業の安定した収益基盤を支える重要な存在です。

LTVを把握することで、企業は以下のような経営判断に役立てることができます。

・収益性の高い優良顧客の傾向分析
・顧客獲得コスト(CAC)の適正な上限設定
・マーケティング施策やカスタマーサクセス活動の投資対効果測定


SaaSビジネスではなぜLTVが最重要指標なのか

かつての売り切り型ビジネスとは異なり、SaaSをはじめとするサブスクリプションビジネスの収益は、顧客による継続的な利用が前提となります。このビジネスモデルの変化に伴い、LTVが経営の羅針盤として不可欠な指標となった背景には、いくつかの要因があります。

1.新規顧客獲得の難化とコストの高騰

市場の成熟や競争の激化により、多くの業界で新規顧客を獲得することは以前より格段に難しくなっています。マーケティングの世界で広く知られる「1:5の法則」が示すように、新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるといわれています。 この状況下で事業を成長させるには、多大なコストをかけて新規顧客を追い求めるだけでなく、既にいる顧客との関係を深め、LTVを高めていく戦略が極めて重要になります。

2.サブスクリプションモデルの普及

SaaSビジネスに代表されるサブスクリプションモデルでは、顧客がサービスを継続利用することで収益が積み上がっていきます。つまり、いかに解約(チャーン)を防ぎ、長く利用してもらうかが事業の生命線となります。LTVは、この「顧客との継続的な関係性」を利益という観点から定量的に評価する最適な指標であり、事業の健全性を判断する上で欠かせません。

3.データドリブンな意思決定(One to Oneマーケティング)への移行

テクノロジーの進化により、顧客の行動データを収集・分析し、一人ひとりに最適化されたアプローチを行う「One to Oneマーケティング」が主流となりました。LTVを顧客セグメント別に分析することで、「どの顧客層が最も収益性が高いのか」「どのチャネルから獲得した顧客のLTVが高いのか」といったことが明確になります。これにより、限られたリソースを最も効果的なマーケティング活動や営業活動に集中投下するといった、データに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。



LTVの計算方法

LTVには複数の計算方法が存在し、事業モデルや分析の目的に応じて使い分けることが重要です。

基本的なLTV計算式

最もシンプルで基本的な計算式は以下の通りです。この式は、小売業やECサイトなど、リピート購入が基本となるビジネスモデルでLTVの概算を把握するのに役立ちます。

LTV = 平均購入単価 × 平均購入回数 × 平均継続期間


利益とコストを考慮したLTV計算式

より正確な収益性を測るためには、売上だけでなく利益率と、顧客の獲得・維持にかかったコストを考慮する必要があります。この計算式を用いることで、一人の顧客が生涯にもたらす「真の利益」を把握でき、マーケティング投資のROI(投資対効果)をより厳密に評価できます。

LTV = (平均購入単価 × 粗利率 × 購入頻度 × 継続期間) − (新規顧客獲得コスト + 既存顧客維持コスト)


SaaSビジネスで最も重要なLTV計算式(チャーンレート活用)

SaaSやサブスクリプションビジネスにおいて最も一般的で重要なのが、チャーンレート(解約率)を用いた以下の計算式です。

LTV = ARPA (または ARPU) ÷ チャーンレート


例えば、ARPAが月額5万円で、月次チャーンレートが2%の場合、LTVは以下のように計算できます。
LTV = 50,000円 ÷ 0.02 = 2,500,000円
この計算により、一社の顧客獲得が平均して250万円の生涯価値をもたらすことが予測できます。

なお、この計算式がSaaSビジネスで重要視される理由と、各要素の意味は以下の通りです。

ARPA (Average Revenue Per Account)
ARPU (Average Revenue Per User)              
1アカウントあたり、または1ユーザーあたりの平均売上を示します。SaaSビジネスの月次収益(MRR)をアカウント数やユーザー数で割ることで算出できます。
チャーンレート (解約率)一定期間内にサービスを解約した顧客の割合です。SaaSビジネスでは、顧客の平均継続期間を直接算出するよりも、チャーンレートから「平均顧客寿命(1 ÷ チャーンレート)」を逆算する方が実用的かつ正確なため、この計算式が広く用いられています。


LTVを最大化するための5つのポイント

LTVの計算式からわかるように、LTVを最大化するための戦略は大きく分けて「顧客単価(ARPA)を上げる」ことと「解約率(チャーンレート)を下げる」ことの2つに集約されます。ここでは、明日から実践できる5つの具体的な戦略を解説します。

顧客単価(ARPA)を上げる

一顧客あたりの売上を増やすことは、LTV向上に直接的なインパクトを与えます。

・アップセル
顧客が利用中のプランよりも高機能・高価格な上位プランへの移行を促します。顧客の利用状況をデータで分析し、上位プランの機能がもたらす価値を具体的に提示することが成功の鍵です。

・クロスセル
現在利用中のプランに関連するオプション機能や別サービスの追加契約を提案します。

・プライシング戦略の見直し
顧客が感じる価値に基づいた料金プランを設計します。機能やサポートレベルに応じて複数のプラン(例:松竹梅プラン)を用意し、顧客が自社のニーズに合ったプランを選べるようにすることも有効です。

購入頻度を高める

顧客との接点を増やし、サービスの利用を促進することで、結果的に上位プランへの移行や追加オプションの購入に繋がります。

・継続的なコミュニケーション
メールマガジンやウェビナー、ユーザー会などを通じて、新機能の紹介や活用方法といった有益な情報を提供し、サービスへのエンゲージメントを高めます。

解約率(チャーンレート)を下げる

顧客の流出を防ぎ、利用期間を延ばすことはLTV向上の根幹です。

・オンボーディング
契約初期の顧客がサービスをスムーズに使いこなし、早期に価値を実感できるよう手厚くサポートします。これにより、初期段階での離脱を大幅に防ぐことができます。

・カスタマーサクセス
顧客がサービスを活用して事業上の「成功」を収められるよう、能動的に働きかけます。顧客満足度を高め、解約の根本原因を取り除く最も効果的なアプローチです。

・カスタマーサポート
問い合わせやトラブルに対して迅速かつ的確に対応し、顧客の不満を解消します。

顧客ロイヤルティを高める

顧客に自社やサービスの「ファン」になってもらうことは、上記すべての施策の基盤となります。

・コミュニティの形成
ユーザー同士が情報交換できるオンラインコミュニティやイベントを運営し、ブランドへの帰属意識を高めます。

・優れた顧客体験(CX)の提供
製品の使いやすさからサポート対応まで、あらゆる顧客接点において質の高い体験を提供し、顧客満足度を向上させます。

コストを最適化し、事業の健全性を保つ

LTVは利益ベースで考えることが重要であり、顧客獲得・維持にかかるコストの管理も欠かせません。

・ユニットエコノミクスの監視
事業の健全性を示す指標「ユニットエコノミクス(LTV ÷ CAC)」をモニタリングします。一般的に、この値が3以上であることが、事業が健全に成長している目安とされています。

・高LTV顧客層への投資
LTVをセグメント別に分析し、最も収益性の高い顧客層を獲得できるマーケティングチャネルや営業活動にリソースを集中させます


【参考記事】LTV向上のための施策|メリット・計算方法・効果的なツールも解説


「Scalebase」で実現するデータドリブン経営

LTVを最大化するためには、正確なデータに基づいた計測と分析がすべての起点となります。しかし、SaaSビジネス特有の複雑な料金体系(従量課金、複数プラン、日割り計算、キャンペーン割引など)を手作業やExcelで管理していると、データが分散し、正確なLTVをリアルタイムで把握することは極めて困難です。

サブスクリプションビジネスの販売・請求管理システム「Scalebase」は、こうした課題を解決し、データに基づいたLTV向上戦略を支援します。「Scalebase」は、見積から契約管理、複雑な料金計算、請求書発行、売上計上、各種KPI分析まで、サブスクリプションビジネスの収益プロセスを一気通貫で管理できるプラットフォームです。

「Scalebase」がLTV向上に貢献するポイント

・重要KPIのリアルタイム可視化
LTVはもちろん、その計算要素となるMRR(月次経常収益)、ARR(年次経常収益)、チャーンレート、顧客数といった重要指標を、ダッシュボードで常に正確に把握できます。これにより、施策の効果を即座に確認し、迅速な意思決定が可能になります。

・複雑な契約・請求管理の自動化
顧客ごとの異なる契約条件や、アップセル・ダウンセルに伴う契約変更履歴、日割り計算などを正確に管理。手作業によるミスを防ぎ、信頼性の高いデータ基盤を構築します。

・データに基づいた戦略実行の支援
正確な顧客データと収益データを基に、効果的なプライシング戦略の検討や、アップセル・クロスセルに最適なタイミングの特定など、LTV最大化に向けた具体的なアクションに繋げることができます。


スプレッドシートや既存の基幹システムでの管理に限界を感じているなら、LTV向上と事業成長の加速を実現する「Scalebase」の導入をぜひご検討ください。



まとめ

LTV(顧客生涯価値)は、顧客との長期的な関係性が収益の源泉となるSaaSビジネスにおいて、事業の健全性と成長性を示す最も重要な指標です。LTVを最大化するには、「顧客単価の向上」と「解約率の低下」という2つの大きな柱を中心に、顧客体験の向上やコストの最適化といった多角的な施策を継続的に実行していく必要があります。そして、それら全ての活動の土台となるのが、信頼できるデータです。

Scalebase」のようなツールを活用して収益プロセス全体を可視化・効率化し、データに基づいたLTV向上サイクルを回していくことが、競争の激しい市場で勝ち抜くための鍵となるでしょう。


SaaS・サブスクリプションのKPI一覧

・主要KPI一覧
・MRR(月次経常収益)
・ARR(年次経常収益)
・NRR(売上維持率)
・LTV(顧客生涯価値)
・ユニットエコノミクス(LTV/CAC)
・チャーンレート(解約率)
・CAC(顧客獲得単価)
・CAC Payback Period(CAC回収期間)
・ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上高)

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