2025.9.30

SaaS事業の成長を加速させるLTV向上戦略|実践すべき7つの施策と必須ツール

市場の成熟化と競争激化により、多くのSaaS・サブスクリプション事業において新規顧客獲得の難易度は増しています。このような状況で持続的な成長を遂げるためには、既存顧客との関係を深化させ、顧客一人ひとりから得られる生涯価値、すなわち LTV(Life Time Value)を最大化する戦略が不可欠です。

しかし、「解約率がなかなか下がらない」「アップセルの機会を逸している」「データが分散し、LTV向上のための正確なKPIが追えない」といった課題に直面している事業責任者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、LTVの基本的な概念を再確認した上で、明日から実践できる具体的なLTV向上施策を7つ厳選して解説します。


BtoB向け継続課金サービスの事業を成功させるためには、LTVを向上させる以外にも、いくつか押さえるべきポイントがあります。成功のポイントを詳しく知りたい方は「BtoB継続課金ビジネスを成功に導く販売・請求管理」をお読みください。


目次
LTVと計算方法
なぜSaaS事業の成長にLTV向上が不可欠なのか?
LTVを構成するKPIと改善の方向性
取り組むべきLTV向上施策7選
LTV向上を阻む「見えざる壁」とデータドリブンな解決策
データに基づいたLTV向上を実現する販売・請求管理システム「Scalebase」


LTVと計算方法

LTVとは

LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)とは、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの間に、自社がその顧客から得られる利益の総額を示す指標です。LTVを確認することで、各顧客が企業にとってどれだけの価値を持っているかが明確になり、マーケティング戦略やビジネスの意思決定に役立ちます。

顧客の好みや購買パターンが多様化し、人口減少により新規顧客の獲得が難しくなっている現代では、企業のマーケティングにおいてLTVの考え方は欠かせません。

LTVの計算方法

LTVの計算方法はいくつかありますが、代表的な計算方法として以下2つの計算式があります。

・基本的なLTVの計算方法:平均顧客単価×利益率×購買頻度×継続期間
・サブスクリプション商材の計算方法:ユーザー平均単価×粗利率÷解約率

それぞれの計算方法について、詳しく解説します。

基本的なLTVの計算方法


以下の計算式は、ECや通販を含む小売業やサービス業がLTVを計算したい場合に適しています。

LTV=平均顧客単価×利益率×購買頻度×継続期間

具体的な例を使って計算してみましょう。

・平均顧客単価:10,000円
・利益率:20%(0.2)
・購買頻度:年に2回
・継続期間:3年

この場合、「LTV=10,000×0.2×2×3=12,000」となり、1人(1社)の顧客から得られる生涯価値(LTV)は、12,000円となります。

サブスクリプション商材の計算方法

サブスクリプション商材のLTVの計算方法は、

LTV=ユーザー平均単価×粗利率÷解約率

※解約率は、「月ごとの解約顧客数」÷「月の総顧客数」で計算します。

具体的な例を使って計算してみましょう。

・ユーザー平均単価:1,000円/月
・粗利率:30%(0.3)
・解約率:5%(0.05)

この場合、「LTV=1,000×0.3÷0.05=6,000」となり、1人の顧客から得られる生涯価値(LTV)は6,000円となります。


なぜSaaS事業の成長にLTV向上が不可欠なのか?

従来の「モノ売り」とは異なり、顧客との継続的な関係が収益の基盤となるSaaS・サブスクリプションビジネスにおいて、LTVは事業の健全性と成長可能性を測る最重要指標です。市場が成熟し新規顧客獲得コスト(CAC)が高騰する中、既存顧客から得られる利益を最大化することが、持続可能な成長の鍵となります。
LTVを向上させることで、以下のようなメリットがもたらされます。

・収益の安定化と予測可能性の向上
高い顧客維持率は、安定した経常収益(MRR/ARR)基盤を築きます。

・投資対効果(ROI)の改善
LTVとCACのバランスを示す「ユニットエコノミクス」が改善し、マーケティングや営業活動の効率性が高まります。一般的にLTVがCACの3倍以上であることが健全な事業の目安とされています。

・事業成長への再投資
安定した収益基盤は、製品開発や新たな市場開拓への再投資を可能にします。


LTVは主に以下の要素から構成されます。LTV向上のためには、これらのKPIを分解し、それぞれに対する改善アプローチを考えることが有効です。

顧客単価 (ARPU: Average Revenue Per User)
一顧客あたりの平均売上。アップセルやクロスセルによって向上させます。

継続期間 (顧客寿命)
顧客がサービスを利用し続ける期間。解約率(チャーンレート)を下げることで延伸します。

利益率 (粗利率)
顧客から得られる利益の割合。コスト削減によって改善します。


取り組むべきLTV向上施策7選

LTVを構成する各KPIを改善するための、具体的な施策をご紹介します。

顧客単価向上の施策

1. アップセル・クロスセル戦略の高度化

既存顧客に対し、より上位のプラン(アップセル)や関連サービス(クロスセル)を提案することは、顧客単価向上の王道です。成功の鍵は、顧客の利用状況や課題に基づき、最適なタイミングで価値ある提案を行う体制を構築することです。CRMやカスタマーサクセスツールを活用し、顧客データを分析することで、提案の精度を高めることが可能です。

2. 価値に基づくプライシング戦略の見直し

顧客が製品から得られる価値(Value)を価格設定の軸とする「バリューベースプライシング」は、顧客の納得感を高め、LTV向上に貢献します。特にSaaSビジネスでは、顧客の利用量に応じて料金が変動する従量課金モデルや、機能に応じた階層制プランなどを組み合わせることで、顧客の成長に合わせて収益を拡大させることが可能です。 柔軟な料金モデルの設計と管理は複雑化しがちですが、専門のLTV向上ツールを活用することで効率的に運用できます。

継続期間向上の施策

3. カスタマーサクセスの強化

顧客が製品・サービスを最大限に活用し、事業上の成功を実感できるよう能動的に支援する「カスタマーサクセス」は、解約率(チャーンレート)低減に直結します。オンボーディングを最適化させることで、導入初期の顧客体験を向上させ、早期の価値実感(TTV: Time To Value)を促します。また、ヘルススコアを管理し、顧客の利用状況を数値化することで、解約の予兆を早期に検知してプロアクティブな支援を行うことも有効です。

4. 優れた顧客体験(CX)の提供

製品の機能性だけでなく、サポート対応の質やコミュニケーションなど、顧客が企業と関わるすべての接点(タッチポイント)における体験価値(CX)を高めることが顧客ロイヤルティの向上につながります。定期的なフィードバック収集やNPS®(顧客推奨度)調査などを通じて、顧客の声をサービス改善に活かすサイクルを構築しましょう。

5. ユーザーコミュニティの構築

ユーザー同士が情報交換したり、成功事例を共有したりするコミュニティは、顧客エンゲージメントを高め、サービスへの定着を促進します。企業が積極的に関与し、学びの場を提供することで、顧客ロイヤルティの向上にも繋がります。

【利益率向上の施策】

6. 顧客獲得コスト(CAC)の最適化

LTVと対になる指標が、新規顧客一人を獲得するためにかかったコストであるCAC(Customer Acquisition Cost)です。LTVが高くてもCACが高すぎれば、事業の収益性は悪化します。費用対効果の高いマーケティングチャネルに投資を集中させたり、コンバージョン率(CVR)を改善したりすることで、CACの最適化を図りましょう。

7. 業務プロセスの効率化・自動化

見積もり作成、契約管理、請求書発行、入金消込といった一連の販売プロセス(Quote-to-Cash)は、事業が成長するほど複雑化し、手作業での管理は非効率かつミスを誘発します。これらの業務を自動化できるツールを導入することで、コストを削減し、営業やカスタマーサクセスといったより戦略的な活動にリソースを集中させることができます。


LTV向上を阻む「見えざる壁」とデータドリブンな解決策

多くのSaaS事業者がLTV向上の重要性を認識しながらも、実践段階で「見えざる壁」に直面します。

課題具体的な状況LTVへの悪影響
複雑化・属人化した
契約・請求管理
顧客ごとに異なる料金プラン、割引、契約期間をExcelやスプレッドシートで手管理。担当者しか分からないイレギュラー対応が多発。請求ミスによる顧客満足度低下(→解約率UP)、アップセル・クロスセル時の見積作成遅延
分断されたデータ営業支援ツール(SFA/CRM)、会計ソフト、自社開発システムなどに顧客・契約・請求データが分散。LTV、CAC、解約率などの重要KPIが正確に把握できず、データに基づいた意思決定ができない。
手作業による業務非効率毎月の請求書発行、入金消込、督促業務に多くの工数がかかっている。戦略的なLTV向上施策(CS活動やプライシング見直し)に割くリソースがない。

これらの課題は、迅速かつ正確な意思決定を阻害し、LTV向上施策の実行を妨げる大きな要因となります。この「見えざる壁」を打ち破る鍵は、分散したデータを一元化し、販売から請求までの一連のプロセスを自動化するシステム基盤を構築することです。



データに基づいたLTV向上を実現する販売・請求管理システム「Scalebase」

サブスクリプションビジネスの販売管理システム 「Scalebase」 です。 「Scalebase」は、まさに前述の課題を解決し、データドリブンなLTV向上施策の実行を支援するために設計されたツールです。

「Scalebase」がLTV向上に貢献する4つの理由

1. LTV/KPIの可視化データの一元管理で事業を正確に把握
SFA/CRM、会計ソフトなどと連携し、見積から契約、請求、売上までのデータを一元管理。LTV、MRR、チャーンレートといった重要KPIをリアルタイムで正確に可視化し、迅速な経営判断を支援します。タベレル株式会社様のように、LTVの可視化を目的として導入されるケースもあります。

2. 【顧客単価UP】柔軟なプライシングで収益機会を最大化
ユーザー数に応じた段階的な料金体系や、利用量に応じた従量課金、オプションの組み合わせなど、複雑な料金モデルを標準機能で柔軟に設計・自動計算できます。これにより、顧客のニーズに合わせたアップセル・クロスセルを容易にし、顧客単価の向上を実現します。

3. 【解約率DOWN】正確な請求業務で顧客満足度を向上
複雑な料金計算や契約変更を自動で反映し、毎月ミスなく迅速な請求データ作成を実現。請求に関するミスは顧客の信頼を損なう大きな要因ですが、これを防ぐことで顧客満足度を高め、解約率の低減に貢献します。

4. 【コスト削減】業務自動化で戦略的活動に集中
手作業で行っていた見積作成、契約管理、請求・決済・消込・督促といった一連の業務を自動化。創出されたリソースを、カスタマーサクセスやプライシング戦略の検討といった、より付加価値の高いLTV向上施策に集中させることができます。

「Scalebase」は単なる業務効率化ツールではなく、SaaS事業の成長をデータと仕組みで支え、LTV向上を実現するための戦略的パートナーです。




まとめ

本記事では、LTVという言葉の定義からLTVの計算方法、活用のメリットやLTVを向上させるポイントについて解説しました。

LTVを向上させることは、収益性の高いビジネスを築き、継続的な成長を実現するために欠かせません。特に、サブスクリプションや従量課金ビジネスでは、顧客の継続的な商品やサービスの利用が売上に直接影響を与えるため、LTVの重要性は一層高くなります。

LTV向上でお悩みの方は、サブスクリプション企業が多く使用する販売・請求管理システム「Scalebase」をぜひチェックしてみてください。サービスについて詳しく知りたい方は「SaaSモデル|ストックビジネス|従量課金 のパートナー」から資料をダウンロードできます。



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