2024.6.17

SaaSビジネスの最重要指標MRR(Monthly Recurring Revenue)とは?計算方法や4つ構成要素などを解説

MRRとは、「Monthly Recurring Revenue」の略で、毎月繰り返し得られる収益、つまり「月次経常収益」を指します。SaaSなどのサブスクリプションビジネスにおける最重要指標の1つで、事業の安定性や成長率を判断するために利用されます。

サブスクリプションビジネス、とりわけSaaSビジネスに取り組むなら必ず覚えておきたいMRRですが、ここではMRRについて、その計算方法や重要性について改めて解説します。


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目次
MRR(Monthly Recurring Revenue)とは?
MRRの4つの構成要素
MRRの計算方法
MRR計算時の注意点
MRRと間違いやすい?「ARR」「CMRR」「NRR」とは
MRRはなぜ重要なのか
各MRRの改善に求められることとは?
MRRなどの事業指標を可視化!サブスク管理の「Scalebase」
まとめ


MRR(Monthly Recurring Revenue)とは?

MRRとは、「Monthly Recurring Revenue」の略で、毎月繰り返し得られる収益、つまり「月次経常収益」を指し、SaaSなどのサブスクリプションビジネスにおいて、事業の安定性や成長率を判断するための重要な指標として使われています。

月間の収益を表す指標のため、SaaSビジネスの中でも契約期間が月単位のサービスであったり、月額での請求を行っている場合に、重要視されます。また、「継続して発生する」という点がポイントのため、初期費用やコンサルティング費用など、一時的なスポットの収益は含みません。SaaSビジネスに取り組むなら必ず覚えておきたい内容ですが、サブスクリプション型の収入が発生しないWebサイト制作、実店舗運営においては重要な指標ではありません。



MRRの4つの構成要素

MRRを算出・分析するうえで重要な、4つのMRRについて説明します。4つのうち、New MRR・Expansion MRRは「前月より増えた」MRRを意味し、Downgrade MRR・Churn MRRは「前月より減った」MRRを意味します。


New MRR(新規MRR)

New MRRとは、当月の新規顧客の獲得によって新たに発生した、増加分のMRRを指します。

例えば、50人の新規ユーザーが月額1万円のプランに加入した場合、New MRRは1万円×50人=50万円になります。


Expansion MRR(アップグレードMRR)

Expansion  MRRとは、既存顧客がプランをアップグレードしたことで、前月と比較して新たに発生した増加分のMRRを指します。

複数のプランがある場合、下位プランから上位プランにアップグレード、いわゆるアップセルが発生すると、前月よりも取引額が増加します。例えば、月額が1万円、3万円、5万円の3プランがあり、ユーザーAが月額1万円から月額3万円のプランに、ユーザーBが月額1万円から月額5万円のプランにアップセルした場合、その月のExpansion MRRは2万円+4万円=6万円になります。


Downgrade MRR(ダウングレードMRR)

Downgrade MRRとは、既存顧客がプランをダウングレードしたことで、前月と比較して失われた減少分MRRを指します。

Expansion MRRとは逆の考え方で、上位プランから下位プランにダウングレードしたことで、取引額は減少します。例えば、月額が1万円、3万円、5万円の3プランがあり、ユーザーCが月額5万円から月額3万円のプランに、ユーザーBが月額3万円から月額1万円のプランに変更した場合、その月のDowngrade MRRは2万円+2万円=4万円になります。


Churn MRR(解約MRR)

Chum MRRとは、当該月にサービスを解約した顧客により失われた、減少分のMRRを指します。Downgrade MRRと同様に、大きくなるほど収益のマイナスに繋がり、少ないほど事業の健全性・安定性が高いと判断できます。

例えば、5人のユーザが月額3万円のプランを解約した場合、その月のChurn MRRは3万円×5人=15万円と算出されます。



MRRの計算方法

基本の計算方法

MRRは、「月額利用料×ユーザー数」で算出できます。例えば、月額2万円で、ユーザー数が120人の場合、2万円×120人=240万円になります。


契約プランが複数存在する場合

契約プランが複数ある場合は、それぞれのプランごとにMRRを算出し、合算します。

例えば、月額1万円のプランに100名、月額3万円のプランに30名の契約がある場合、その月のMRRは、1万円×100人+3万円×30人=190万円となります。


契約期間が複数ある場合の計算方法

年間、6か月、1ヵ月単位での契約など、契約期間が複数存在する場合、いずれも、1カ月分を計算した上で算出します。年契約であれば「プラン料金÷12×ユーザー数」、6か月契約であれば「プラン料金÷6×ユーザー数」というように、月額に直したうえでユーザー数をかけて、それぞれを合算することでMRRを算出できます。

例えば、1年契約が10万円でユーザー60名、6か月契約が5万円がユーザー30名のように契約期間が異なるプランが2つある場合、MRRは(10万円÷12カ月×60人)+(5万円÷6カ月×30人)=75万円になります。


各種類のMRRを計算することで、当該月のMRRを算出する方法

前月のMRRから、4つのMRRの増減を考慮して計算することで、今月のMRRを算出することも可能です。4つのMRRうち、New MRR・Expansion MRRは「前月より増えた」MRRで、Downgrade MRR・Churn MRRは「前月より減った」MRRを指し、それぞれの増減をもとに算出します。

当該月のMRR=前月のMRR+(New MRR+Expansion MRR-Downgrade MRR-Churn MRR)

例えば、前月のMRRが50万円、New MRRが10万円、Expansion MRRが5万円、Downgrade MRRが3万円、Churn MRR1万円の場合、当月のMRRは50万円+(10万円+5万円ー3万円ー1万円)=61万円になります。


MRR計算時の注意点

MRRは月次経常収益であり、「毎月決まって発生する売上」のみを扱います。以下のようなイレギュラーがある場合は、MRRに含めるべきなのか、含めてはいけないのか注意しましょう。


「毎月決まって発生する売上」以外は含めない
初期費用やコンサルティング費用など、単発の収益はMRRに含みません。同一顧客から得た収益であっても、MRRとその他の収益は明確に分けましょう。

支払いの遅延分があっても、MRRには影響しない
MRRは「毎月決まって発生する売上」です。顧客からの支払いが一時的に遅延している場合でも、契約関係にあり利用料が発生している場合は、MRRとしては遅延の事実は考慮せずに計算しましょう。

ディスカウントや無料期間がある場合は、実際の請求額をもとに算出する
サブスクリプションサービスの中には「契約後1年までは半額」「最初の1カ月間は無料」といったキャンペーンを実施していることがあります。ディスカウントや無料期間がある場合は、実際の契約内容・請求額をもとにMRRを計算しましょう。

会計上の収益との違い
MRRは、初期費用やその月だけ追加で支払ったオプション費用などの収益を含めずに、毎月確定している収益のみを計上したものです。経営戦略の立案などに利用する指標であり、会計上の公式指標とは異なると理解しておくことが大切です。



MRRと間違いやすい?「ARR」「CMRR」「NRR」とは

ARRとは

MRRに似た指標として「ARR」があります。ARRとは「Annual Recurring Revenue」の頭文字を取った言葉で、「年次経常収益」を意味します。MRRが毎月発生する収益であるのに対し、ARRは毎年決まって発生する収益・売上をさします。

年間契約を締結することの多いBtoBビジネスでは、MRRよりもARRを重視する傾向があります。時価総額の算出や、将来性の測定など、MRRより長期的な指標として用いられます。ARRは、「MRR×12」の計算式で算出できます。ただし、収益の増減が安定していないスタートアップなどの場合、ARRの予測は難しいため注意しましょう。


CMRRとは

CMRRとは「Committed Monthly Recurring Revenue」の略語で、「既決月間定期収益」を意味します。MRRはビジネスの安定性や成長性を予測できますが、将来的に発生する解約やアップグレードなどは考慮していません。その一方で、1年契約などにより「確約されたMRR」を「CRMM」と分類することで、見込み確度の向上に繋げることができます。


NRRとは

MRRと混同されがちな言葉に「NRR」があります。NRRとは「Net Revenue Retention」の頭文字で、「売上維持率」を指します。既存顧客から得られたMRRが一定期間内にどれほど増減したか、どの程度維持されているかを測る指標です。おもに顧客の継続率・離脱率を把握するとき、翌期の売上を予測する指標として役立ちます。

NRRは、「(月初の合計MRR+Expansion MRR-Churn MRR-Downgrade MRR)÷月初の合計MRR」で求められ、100%を上回っていれば、契約は良好で安定した事業であるといえます。NRRが低い、もしくは下がったときは、契約が継続されない問題点があると考えられます。


MRRはなぜ重要なのか?

ビジネスの成長率が見える

従来のいわゆる売り切り型モデルの場合は、その月の売上高が直接的に成長指標として用いられます。しかし、SaaSのようなサブスクリプションビジネスの場合、成長率を測るためにはMRRが適しているとされます。

MRRを計測することで、収益全体のうち何割が継続収入なのかが判明します。サブスクリプションビジネスは、ユーザーの継続利用によって発生する利益を積み上げていく形です。そのため、収益全体のMRRの割合が高ければ高いほど事業が安定しているとされます。また、MRRは月次で数値が可視化されるため、MRRの推移により、短期的な視点で成長率を把握することも可能です。

そのためMRRは、サブスクリプションビジネスでは「成長率を知る重要な評価指標」として注目されています。


将来予測に役立つ

サブスクリプションビジネスは、月額でサービス利用料が決まっているケースが多く、その場合、MRRの予測が非常にしやすくなります。

契約期間が1ヵ月や12ヶ月など異なる場合であっても、契約更新時のチャーンレートを加味するだけで、今後の1年間の売上見込みを計算できるというわけです。MRRを予測することで、事業計画の立案やキャッシュフローの予測にも役立てることができます。


SaaS Quick Ratioの算出にMRRが必要

MRRは、先ほどの説明した「NRR」や、企業の成長度を把握する「SaaS Quick Ratio」の算出にも必要になります。

SaaS Quicks Ratioは、SaaSビジネスの健全性や企業の成長率を把握することができる重要な指標のひとつです。「MRR増加分」と「MRR減少分」の比率で求められます。

SaaS Quick Ratio(%)=(New MRR+Expansion MRR)÷(Downgrade MRR+Churn MRR)


SaaS Quick Ratioの数値は、増えた売上と減った売上が同額であれば、SaaS Quick Ratioは1となります。Quick Ratioが1未満の場合、新規顧客やアップグレード顧客と比べて解約した顧客が多いことを指し、ビジネスが縮小していることを意味します。数値が高いほど増加分が多いことを意味しますが、一般的にSaaS Quick Ratioの数値が4以上で安定している場合に、ビジネスとして収益の安定や成長性が高いとされています。

MRRが月ごとの成長率を表すのに対して、SaaS Quick Ratioは企業が継続的な収益を得られる可能性を測る指標といえます。MRRだけでなく、SaaS Quick Ratioで4つのMRRを総合的に判断することは、持続可能な事業か確認することに繋がります。


投資家の判断材料になる

MRRは、第三者がSaaS・サブスクリプションビジネスを手掛ける企業を評価する判断材料としても活用されます。特に投資家にとっては、MRRによってSaaSビジネスの実力が数値化されることで、ビジネスの成長性・効率性・継続性を把握でき、投資の判断を行いやすくなります。

毎月発生する売上は、状況に何も変化がなければ前月と同じ額で推移します。一方、MRRが前月よりも増加すれば、その事業は成長性が見込めると判断できます。当たり前ですがMRRが成長している、さらにいえば、「New MRR」と「Expansion MRR」が大きく、「Downgrade MRR」と「Churn MRR」が小さいビジネスを好んで投資するということになります。

ただし、企業フェーズによってどの種類のMRRが重要になるかは、異なるとされています。創業直後から発展途中の段階にある企業では、新規ユーザーの獲得である「New MRR」を、企業が成長していくにつれて、Expansion MRRやDowngrade MRR、Churn MRR、最終的には顧客ロイヤリティの高さを重視したSaaS Quick Ratioなどに重きを置くとされています。



各MRRの改善に求められることとは?

MRRの把握は、あくまで課題の発見と改善を目的としています。事業成功を目指すうえでMRRの数値を向上させることが大切ですが、4種類のうちどのMRRに対策が必要かによって変わってきます。MRRの種類別に、それぞれポイントを押さえた改善策で、事業の健全化や拡大に活用しましょう。

・New MRR

New MRRの改善には、新規顧客の獲得が必須です。

リード数の増加とコンバージョン率の向上を目的としたマーケティング施策、営業組織の見直しなどに注力しましょう。例えば、ターゲティングの再検討、コミュニケーション設計の見直し、SFAツールの導入による営業効率の改善などが該当します。


・Expansion MRR

Expansion MRRの改善には、顧客単価を上げる施策が必要です。

既存顧客へのアップセル(顧客に上位の商材を提案し購買してもらうこと)が必要になるため、通常プランとの差別化を意識した、オプションサービスの導入や、関連サービスの付加などが行える体制を築く必要があります。

また、アップセル実現には、顧客ロイヤリティの向上が求められます。自社の商品・サービスを利用するメリットを実感してもらい、顧客との継続的なコミュニケーションを通じ、ファン化させることが重要です。他にもアップグレードのプランにもお試し期間を設定し、実際に利用してもらうことも有効な手段です。

Expansion MRRは企業の安定した収益に大きく影響するため、定期的に取りこぼしがないかも確認しましょう。


・Downgrade MRR

Downgrade MRRの改善には、サービス・商品の品質向上が大切です。

契約プランをダウングレードする理由は、商品が使いこなせない、サービスに不満があることが考えられます。それを踏まえ、サービスの質の向上や、ユーザーをフォローできる体制の構築が必要です。カスタマーサクセス部門を創設など、顧客のための継続的なサポート体制を構築し、利用しやすい環境を整えることが重要です。

また、サービスの問題点を改善する必要があります。アンケートや行動データなどから、ダウングレードした顧客の傾向を分析し、サービスやサポートなど質の向上に役立てましょう。顧客との関係値を築きニーズを正確に把握がすることで、改善だけでなく、新たな施策にも繋がります。


・Churn MRR

Churn MRRの改善には、解約を防止するための施策が必要です。

具体策はDowngrade MRRの場合と基本的には変わりません。ただし、Churn MRRの方が価格面・サービス面に深刻な課題を抱えていると考えられます。サービスの利用が「顧客の課題解決につながらない」とこが解約の主な要因と考えられるため、顧客視点に立ち、サービスの問題点を解決することが重要となります。

例えば、顧客ニーズとのマッチング具合、サービスのクオリティ、料金面などはチェックしておきたい部分です。また、「オンボーディング」や「サポート強化」が求められている場合は、カスタマーサクセスの考え方や専門部門の立ち上げなども有効です。

New MRRの改善を目指すよりも既存顧客に向けたChurn MRRの改善のほうがコストが少なく、また利益にも大きくつながりやすいと言われており、多くの場合「Churn MRR」の改善を優先的に狙っていくべきだとされています。


MRRなどの事業指標を可視化!サブスク管理の「Scalebase」

最後に、アルプが提供する継続課金や従量課金を成功に導く販売・請求管理サービス「Scalebase」を紹介します。

Scalebaseは、SaaSをはじめとした継続課金ビジネスに特化した販売・請求管理SaaSです。特にプライシング設計の柔軟性に強みを持っています。毎月の従量課金の計算も、使用量データをインポートするだけ。顧客ごとに異なる契約条件、日割りやキャンペーンの適用といった情報を正確に管理し、事前にScalebaseで設定した計算式をもとに、自動で請求金額の算出をするため、ミスなく迅速請求データの確定が行えます。

さらにScalebaseでは、契約・請求データをもとに毎月のMRRやChurn Rateの可視化にも対応しています。毎月、顧客に出す請求のデータをそのまま活用するため、正確な数字を設定なしで可視化します。



まとめ

サブスクリプションビジネスを成長させるためには、各フェーズにあったKPIを設定し、課題の優先順位付けを行うことが大切です。そのなかでも、MRRは、サブスクリプションビジネスにおける「月次経常収益」を指し、資金調達時など第三者がビジネスを評価する際に活用される、事業の成長性を測る経営上の重要な指標となります。

ただし、数値化することで満足するのではなく、4つのMRRを正確に把握し、定期的に分析・改善することで企業の成長に繋げることが何より重要です。MRRを上手に活用しSaaSビジネスを効率的に進めてみてください。


SaaS・サブスクリプションのKPI一覧

・主要KPI一覧
・MRR(月次経常収益)
・ARR(年次経常収益)
・NRR(売上維持率)
・LTV(顧客生涯価値)
・LTV/CAC(ユニットエコノミクス)
・チャーンレート(解約率)
・CAC(顧客獲得単価)
・CAC Payback Period(CAC回収期間)
・ARPU(ユーザー1人あたりの平均売上高)


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