2025.11.6
SaaS(Software as a Service)は、従来の売り切り型とは一線を画す、継続的な収益モデルにより、企業の持続的な成長を加速させるビジネスモデルの一つです。大手企業による新規事業の検討や、既存事業のデジタル化(DX)推進において、SaaS型の採用が不可欠となっています。
今後も市場の拡大が見込まれる中で、このビジネスモデルを成功させる鍵は、顧客の成功(LTV)を最大化する戦略的な収益モデルの設計と、それを支える厳密な販売管理にあります。しかし、事業の成長に伴い、見積から収益管理に至るプロセスでデータが分断されると、正確な経営指標の把握が困難となり、迅速な経営判断の遅れという構造的な課題に直面します。
本記事は、SaaSの収益モデルが持つ将来性と、複雑化する収益プロセスを最適化し、データドリブンな意思決定を実現するための管理戦略を網羅的に解説します
また、SaaS企業向けに、「サブスクリプションの収益プロセス」についてわかりやすくまとめた資料もあります。ご興味のある方は「サブスクリプションにおける収益プロセスの落とし穴」もあわせてお読みください。
目次
SaaSビジネスモデルが、なぜ企業の成長戦略の鍵となるのか
事業成長を左右するSaaS収益モデルの種類と設計戦略
SaaS事業の健全な成長を測る必須KPIとデータ活用の重要性
成長期SaaS事業が直面する「収益管理の複雑化」という課題
収益プロセスを最適化し、事業成長を加速させる管理戦略と「Scalebase」
SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアを提供する形態として、企業の持続的な成長を加速させるパートナーとして世界的に注目を集めるビジネスモデルです。特に、大手企業による新規事業の検討や、既存事業のデジタル化(DX)推進において、SaaS型のサービス採用が不可欠となっています。
SaaSとは、クラウド上でソフトウェアを提供し、ユーザーがインターネットを通じてサービスを利用する形態を指します。多くのSaaS企業は、このサービス提供に対し、月額または年額の料金を請求するサブスクリプションモデル(定額制の支払い方法)を採用しています。
SaaS市場は急速な成長を続けており、今後も市場規模の拡大が続くと予想されています。例えば、日本のSaaS市場規模は、2020年度実績の2倍以上となる1兆1,700億円まで成長すると予測されており、この市場の将来性は極めて高いと言えます。
SaaSビジネスモデルの最も大きな特徴は、継続的かつ予測可能な収益を生み出すストック型の収益モデルである点です。
| 項目 | 従来モデル 売り切り型ソフトウェア | SaaSモデル |
|---|---|---|
| 収益計上 | 一括計上(販売時) | 分割計上(毎月/毎年) |
| コスト構造 | 売上比例型 | 初期獲得型(先行投資) |
| 成功の鍵 | 新規販売 | 顧客維持とLTVの最大化 |
SaaSでは、新規顧客を獲得するためにかけたコスト(CAC)を、月々の継続利用による収益(MRR)の積み重ねによって回収します。そのため、単なる売上高ではなく、顧客1人あたりの採算性(ユニットエコノミクス)や、顧客生涯価値(LTV)の最大化が、事業の成功に不可欠となります。

SaaSの収益モデルを最適化することは、LTVを最大化し、競争優位性を築くための最も重要な経営戦略の一つです。SaaS事業者が採用できるプライシングモデルは多様であり、提供するサービスの価値指標(バリューメトリクス)に応じて適切に設計する必要があります。
SaaSの収益モデルは、主に「定額課金」「従量課金」「フリーミアム」の3つに大別されます。
| プライシングモデル | 概要 | 適しているケース |
|---|---|---|
| 定額課金 (サブスクリプション) | 月額/年額の固定料金。安定的な収益を見込める。 | 利用頻度や量に大きな差がないサービス。 |
| 従量課金 | APIコール数、アクティブユーザー数など、利用量に応じて料金が変動。 | 顧客の成功と事業者の成功が直結するサービス。 |
| フリーミアムモデル | 基本機能を無料で提供し、高度な機能やサポートを有料で提供する。 | 導入ハードルを下げて、幅広いユーザー層を獲得したい場合。 |
特に近年、従量課金モデルは、顧客が使った分だけ支払うという公平性や透明性から注目度が高まっています。また、安定した収益を確保しつつ、利用量増加によるアップサイドも狙えるハイブリッドモデルも多くのSaaS企業で採用されています。
SaaSのプライシング戦略を設計する上で最も重要な要素は、「何に対して課金するのか」という価値指標(バリューメトリクス)の選定です。この指標が、顧客がサービスから得る価値と直結していることが、LTV最大化の鍵となります。
• 例)Slack(アクティブユーザー数)、Snowflake(データ量)、HubSpot(管理するコンタクト数)など、顧客がサービスを積極的に利用し、成功するほど料金が増加する仕組みです。

SaaSという独自のビジネスモデルを成功させるためには、従来の会計指標だけでなく、SaaS特有のKPI(重要業績評価指標)を正確に把握し、データに基づいた意思決定を行うデータドリブン経営が不可欠です。
事業の成長性、効率性、継続性を多角的に評価するために、以下の指標を継続的にモニタリングする必要があります。
| 観点 | 指標 | 概要 |
|---|---|---|
| 成長性 | MRR (⽉間経常収益) | 毎月決まって得られる定額課金による収益。短期的な収益性を評価。 |
| 成長性 | ARR (年間経常収益) | MRRを年換算したもの。長期的な事業計画の基礎。 |
| 効率性 | LTV (顧客生涯価値) | 1顧客が契約期間中にもたらす収益の総和。 |
| 効率性 | CAC (顧客獲得コスト) | 1顧客を獲得するためにかかった総コスト。 |
| 効率性 | LTV/CAC比率 | SaaSビジネスモデルの投資対効果を示す。目安として3倍以上。 |
| 継続性 | チャーンレート (解約率) | 一定期間にサービスを解約した顧客の割合。目安としてB2B SaaSでは月5%未満。 |
SaaSビジネスモデルにおいては、LTVを最大化し、チャーンレートを低減するために、顧客の成功を能動的に支援するカスタマーサクセス(CS)が極めて重要な役割を果たします。
CSは、顧客が製品を最大限に活用できるよう導入支援(オンボーディング)を行い、継続的な関係を維持します。また、顧客の利用状況やニーズを把握することで、アップセルやクロスセルの適切なタイミングを見極め、顧客単価(LTV)を向上させる役割も担います。
SaaS事業が成長し、顧客数や提供するサービスが拡大するにつれて、その収益モデルを支える販売管理業務は著しく複雑化します。特に、多様なプライシングモデルを採用している場合、従来のシステムやExcel/スプレッドシートによる手動管理では限界を迎えます。
販売プロセスが分断されることで、事業全体で深刻な課題が発生します。
| 課題の分類 | 具体的な問題点 | 影響 |
|---|---|---|
| 構造的な課題 | 見積もりから収益管理までのプロセスにおけるデータチェーンの分断。 | データドリブンな意思決定が困難になり、事業成長へのブレーキとなる。 |
| 業務現場の課題 | 複雑な料金計算(従量課金、日割、割引など)の手間が増大し、業務が属人化する。 | 業務工数が増加し、リソースを戦略的な活動に集中できない。 |
| 経営レベルの課題 | 請求ミスや売上計上漏れのリスクが高まり、顧客不満や信頼関係の損失につながる。 | 正確なMRR/ARRがリアルタイムで把握できず、経営判断の遅れが生じる。 |
特に、従量課金や顧客ごとの個別契約条件に対応しようとすると、料金計算が煩雑になり、正確性を担保するためのチェック作業に膨大なリソースが必要となります。
従来のSFA/CRMや会計システムは、継続的なSaaSの収益モデルの管理に特化していません。
• 契約履歴の管理
SaaSでは、アップセルやプラン変更が頻繁に発生しますが、既存のシステムでは、これらの契約内容の変更履歴を時系列で正確に管理することが難しい。
• 柔軟な料金設計への制約
事業の成長に合わせた柔軟な料金改定や新プランの迅速な市場投入が、システムの制約により遅れる。
これらの課題を解決し、SaaSビジネスの持続的な成長を加速させるためには、見積・契約・請求・収益管理を一気通貫でカバーできるシステム基盤の構築が不可欠です。
SaaSビジネスモデルの成功は、複雑化する販売管理業務を最適化し、事業の「データ」を正確かつリアルタイムに把握できるかにかかっています。
Scalebaseは、SaaSビジネス特有の複雑な収益プロセスを最適化し、持続的な成長を加速させるための販売管理システムです。見積、契約、料金計算、請求、決済、入金消込、売上管理といった、一連の販売プロセスを一気通貫で網羅的にカバーします。
Scalebaseは、多様なプライシングモデルへの対応を強みとしています。
• 複雑な料金計算の自動化
単発課金、定額課金、従量課金、多段階従量課金、日割計算、複合商材など、SaaS特有の複雑な料金モデルや、顧客ごとの値引き・キャンペーン適用といった販売条件を標準機能で設定・自動計算できます。
• 契約変更の正確な時系列管理
アップセル、ダウングレード、解約といった頻繁な契約変更履歴を時系列で正確に管理し、常に正しい契約の状態に基づいた請求を可能にします。
• 見積、契約業務の効率化
テンプレートからの見積作成のスピードアップや、承認フローのスムーズな実現、SFA/CRM連携による受注・契約登録工数のゼロ化をサポートし、請求ミスを防ぎます。
Scalebaseの導入により、経営層は正確なSaaSの重要指標をリアルタイムで把握し、戦略的な意思決定が可能になります。
• KPIのリアルタイム可視化
確定した請求データに基づき、MRR/ARR、チャーンレート、LTVなどの重要KPIを可視化します。これは、営業側のデータ(SFA/CRM)ではなく、実際の契約・請求データを基に算出されるため、信頼できる締めデータとして扱えます。
• 成長戦略の実行支援
正確なデータに基づき、価格改定、顧客セグメンテーション、新たなサブスクリプションプランの迅速な市場投入など、事業を次のフェーズに進めるための戦略実行を支援します。
Scalebaseは、請求・決済システムである「Scalebase ペイメント」と連携することで、販売管理から売上回収までを一気通貫で効率化し、バックオフィス業務の劇的な効率化を実現します。
• 売上回収の自動化
請求書発行・送付、クレジットカード・口座振替決済、自動入金消込、自動督促(メール/メッセージ)など、回収プロセス全体を自動化し、オペレーションコストを大幅に削減します。
• 事業を止めないスケーラビリティ
ビジネスモデルの変革や、将来の事業拡大、大企業への対応、既存システム(SFA/CRMや会計ソフトなど)とのAPI連携など、事業を止めないスケーラビリティを提供し、貴社の持続的な成長を支えます。
SaaSビジネスモデルの将来的な成功、特に成長期以降の収益安定化と最大化は、いかに複雑化する収益プロセスを正確に管理・分析できるかにかかっています。Scalebaseは、この課題を解決し、データドリブンな経営を実現するための最適なパートナーです。
【Scalebase が提供する主な価値】
• MRR/ARRの最大化と予測精度の向上
• オペレーションコストの大幅な削減と効率化
• チャーンレート低減への貢献(正確な請求プロセスによる顧客満足度向上)
• データドリブンな戦略の実行と検証
• 事業を止めないスケーラビリティ

サブスクビジネスにおける契約管理・請求管理の効率化でお悩みの場合は、サブスク企業が多く使用する、販売・請求管理システム「Scalebase」や「SaaS販売管理の業務効率化 | Scalebase(スケールベース)」をぜひチェックしてみてください。
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