2025.10.2
近年、ビジネスの世界では「所有から利用へ」という大きな潮流が生まれています。製品を一度販売して終わりという従来の「売り切り型」モデルから、顧客と継続的な関係を築き、安定した収益を生み出す「リカーリングビジネス」への注目が急速に高まっています。
しかし、「リカーリングとサブスクリプションは何が違うのか?」「具体的にどのようなメリットがあり、どう始めればよいのか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、リカーリングビジネスの基本的な意味やサブスクリプションとの違いから、その戦略的なメリット・デメリット、国内外の成功事例、そして事業を成功に導くためのポイントまでを網羅的に解説します。
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目次
リカーリングとは?
なぜリカーリングビジネスが注目されるのか?
リカーリングビジネスの5つのメリット
リカーリングビジネスの3つの課題と対策
リカーリングビジネスのモデルと成功事例
複雑なリカーリングビジネスの管理には「Scalebase」
リカーリング(Recurring)は、「繰り返す」「循環する」という意味の英単語です。ビジネス用語としては、製品やサービスを一度販売して終わりにするのではなく、販売後も顧客と継続的な関係を築き、繰り返し収益を上げ続けるビジネスモデルを指します。
従来の売り切り型(フロー型)ビジネスが製品を売ることを主眼に置く「製品志向」であるのに対し、リカーリングビジネスは顧客への価値提供を主眼に置く「顧客志向」のビジネスモデルといえます。これは、継続的な収益が見込める「ストック型ビジネス」の一種です。
最も身近な例としては、電気・ガス・水道といった公共料金や、スマートフォンの通信料金などが挙げられます。
リカーリングとよく似た言葉に「サブスクリプション」があります。この2つは混同されがちですが、課金形態に違いがあります。一般的に、サブスクリプションはリカーリングビジネスモデルの中に含まれる一形態と理解すると分かりやすいでしょう。
| 項目 | リカーリング | サブスクリプション |
|---|---|---|
| 意味 | 継続的に収益を上げるビジネスモデルの総称 | 定額料金で一定期間の「利用権」を提供するモデル |
| 課金形態 | 従量課金制が主(定額制も含む) | 定額制が主 |
| 料金 | 利用量に応じて変動 | 利用量に関わらず一定 |
| 身近な例 | 電気・ガス・水道代、携帯電話の通信料 | 動画・音楽配信サービス(Netflixなど) |
リカーリングは「使用した分だけ支払う」という従量課金が中心であり、サブスクリプションは「決まった額で使い放題」という定額制が中心という違いがあります。

古くから存在するリカーリングモデルが、なぜ今、これほどまでに再注目されているのでしょうか。その背景には、大きく3つの環境変化があります。
1. 「モノの所有」から「コト(体験)の利用」へ
消費者の価値観が変化し、製品を所有することよりも、それを利用して得られる体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)を重視する傾向が強まっています。リカーリングビジネスは、顧客との継続的な接点を通じて優れたCXを提供し続けることに適したモデルです。
2. デジタル技術の進化
IoT、AI、5Gといったデジタル技術の進展により、製品の利用状況をデータとしてリアルタイムに収集・分析することが可能になりました。これにより、使用量に基づいた正確な課金や、データに基づく予兆保全などの新たな価値提供が実現しやすくなっています。
3. 市場のコモディティ化と収益性の低下
多くの市場で製品の機能や性能での差別化が難しくなり(コモディティ化)、価格競争が激化しています。売り切りモデルでは収益性が低下する中、継続的な収益源を確保できるリカーリングモデルが、企業の持続的成長のために不可欠となっています。
リカーリングビジネスは、企業に多くの戦略的メリットをもたらします。
1. 収益の安定化と予測可能性の向上
毎月・毎年、継続的な収益が見込めるため、売上予測が立てやすくなり、経営が安定します。これにより、的確な投資や事業計画の策定が可能になります。
2. 顧客との継続的な関係構築とLTVの最大化
一度きりの関係で終わらず、顧客と長期的な関係を築くことができます。顧客のニーズを深く理解し、適切なタイミングで追加の提案(アップセル・クロスセル)を行うことで、LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。
3. データ活用による顧客理解の深化
顧客の利用データを継続的に収集・分析することで、「どの機能がよく使われているか」「どのような課題を抱えているか」といった顧客インサイトを深く理解できます。これにより、データに基づいたサービス改善やマーケティング戦略の立案が可能になります。
4. 新規顧客獲得ハードルの低減
特にSaaSなどで見られるように、「使った分だけ」支払う従量課金モデルや、低価格なエントリープランを提供することで、顧客は初期投資を抑えてサービスを試しやすくなります。これにより、新規顧客獲得の心理的なハードルが大きく下がります。
5. 解約率(チャーンレート)の抑制
定額制と異なり、従量課金モデルではサービスを利用しない月の支払いを低く抑えられるため、顧客はサービスを解約する必要性を感じにくくなります。これにより、顧客との契約関係を維持しやすくなります。
多くのメリットがある一方、リカーリングビジネスには特有の課題も存在します。ここでは、主な課題とその対策を解説します。
リカーリングビジネスは、売り切り型に比べて初期の収益が低く、投資回収に時間がかかる傾向があります。この収益とコストの関係は、一時的に収益が悪化する曲線を描くことから「フィッシュカーブ」と呼ばれています。
対策として、長期的な視点での事業計画と十分な資金計画が不可欠です。短期的な収益悪化に耐え、LTVで投資を回収するモデルであることを経営層が理解する必要があります。
顧客に継続して利用してもらうためには、常にサービス価値を向上させ、高い顧客満足度を維持し続けなければなりません。少しでも不満があれば、すぐに解約(チャーン)につながるリスクがあります。
対策として、カスタマーサクセスへの注力が鍵となります。顧客データを活用して利用状況をモニタリングし、顧客が価値を実感できるよう能動的に支援する体制を構築することが重要です。
顧客ごとに異なる契約プラン、利用量に応じた変動料金、アップセルや割引など、管理すべき項目が多岐にわたります。特にExcelなど手作業での管理は、事業が拡大するにつれて限界を迎え、請求ミスや属人化のリスクが高まります。
対策として複雑な契約・料金計算・請求業務を自動化・一元管理できる販売・請求管理システムの導入が有効です。
リカーリングビジネスには様々なモデルが存在します。ここでは代表的なモデルと、その成功事例を紹介します。
| ビジネスモデル | 概要 | 代表的な成功事例 |
|---|---|---|
| 消耗品モデル | 本体を安価または無料で提供し、継続的に必要となる消耗品で収益を得るモデル。 | ジレット(カミソリ)、キヤノン(プリンター) |
| 従量課金モデル | サービスの利用量や成果に応じて料金が変動するモデル。 | AWS(クラウド)、Stripe(決済) |
| サブスクリプションモデル | 月額・年額などの定額料金でサービス利用権を提供するモデル。 | Adobe(ソフトウェア)、Netflix(動画配信) |
| プラットフォームモデル | 多くのユーザーや開発者が参加する基盤を提供し、そこでの取引手数料や利用料で収益を得るモデル。 | Apple(App Store)、ソニー(PlayStation Plus) |
これらの成功事例に共通するのは、単に継続課金にしただけでなく、顧客にとっての価値を深く理解し、その価値と連動した料金体系(プライシング)を設計している点です。
ここまで見てきたように、リカーリングビジネスは大きな成長機会をもたらす一方で、その管理、特に契約・請求業務は非常に複雑です。事業の成長に伴いExcelでの管理に限界を感じ、請求ミスや業務の属人化に悩む企業は少なくありません。
こうした課題を解決するのが、サブスクリプションビジネスのための販売・請求管理システム「Scalebase」です。「Scalebase」は、営業が利用するCRM/SFAと経理が利用する会計ソフトの間に位置し、BtoBの継続課金ビジネスにおける複雑な業務を一元管理・自動化します。
• 柔軟な料金モデルに対応
定額、従量課金、段階制、日割り計算、オプションの組み合わせなど、あらゆる複雑な料金モデルに標準機能で対応。Excelでの煩雑な手作業から解放されます。
• 正確な契約・請求管理
顧客ごとの契約プラン、割引、プラン変更の履歴などを時系列で正確に一元管理。請求漏れやミスを防ぎ、業務の属人化を解消します。
• 経営指標のリアルタイム可視化
MRR/ARR、LTV、解約率(チャーンレート)といった重要KPIをリアルタイムで可視化。データに基づいた迅速な経営判断を支援します。
リカーリングビジネスへの移行や事業拡大を目指すなら、その基盤となる販売・請求管理体制の構築が不可欠です。「Scalebase」は、貴社のプライシング戦略を支え、事業の持続的な成長を後押しします

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リカーリングビジネスは、単なる課金方法の変更ではなく、顧客との関係性を再定義し、継続的な価値提供を通じて共に成長していくビジネスモデルです。収益の安定化やLTV最大化など多くのメリットがある一方で、成功のためには戦略的なプライシング設計と、それを支える強固な業務基盤が不可欠です。
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