2025.9.18

従量課金×定額課金のハイブリッドモデルとは?定額課金だけではもう古い?成功する料金モデルと料金戦略について

ビジネスの「サービス化(XaaS)」が加速する現代において、プライシング(価格設定)は事業の成否を分ける最重要戦略の一つです。しかし、多くの企業が「サブスクリプション=定額課金」という旧来のモデルに留まり、収益最大化の機会を逸しているのではないでしょうか。

顧客がより柔軟な支払いを求める中、固定的な定額課金モデルだけでは顧客ニーズに応えきれず、競争優位性を失うリスクが高まっています。そこで「新常識」として急速に台頭しているのが、定額課金の安定性と従量課金の成長性を両立させる「ハイブリッド」モデルです。

本記事では、定額課金と従量課金の基本的な違いから、なぜ今ハイブリッドモデルがビジネスを成功に導くのか、そして戦略的な料金設計を成功させるための具体的なステップまでを、豊富な事例を交えながら徹底的に解説します。


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目次
従量課金と定額課金のメリット・デメリットを整理
なぜ今、「従量課金ハイブリッド」が戦略的に重要なのか?
収益を最大化する「従量課金ハイブリッドモデル」
失敗しない料金設計のための戦略的5ステップ
事業フェーズと業界特性から考える料金体系
ハイブリッドモデルがもたらすバックオフィスの課題
複雑な料金設計と事業成長を支える販売・請求管理システム「Scalebase」


従量課金と定額課金のメリット・デメリットを整理

料金戦略を検討する上で、まずは両モデルの基本的な特性を理解することが不可欠です。定額課金は予測可能な収益をもたらす一方、従量課金は顧客が受け取る価値との連動性が高いという特徴があります。


課金モデル従量課金 (Usage-Based)          定額課金 (Subscription)      
概要サービスの利用量(データ量、APIコール数、ユーザー数など)に応じて料金が変動する「使った分だけ支払う」モデル。一定期間、固定料金でサービスを利用できるモデル。
顧客側メリット・利用量が少なければコストを抑えられる。
・支払額に納得感が得やすい。
・料金が固定で予算管理がしやすい。
・利用量を気にせず使える安心感がある。
事業者側メリット・顧客の成功(利用拡大)が自社の収益増に直結する。
・利用がなくても解約されにくい。
・収益が安定し、予測しやすい。
・シンプルなモデルは販売やマーケティングが容易。
事業者側デメリット・収益予測が難しく、キャッシュフローが不安定になりがち。
・顧客が利用を控える可能性がある。
・請求業務が煩雑化する。
・ライトユーザーには割高に感じられ、解約リスクが高い。
・ヘビーユーザーからの収益機会を逃す可能性がある。


サブスクリプションの本質は「サービスの利用を通して、顧客に価値を提供し続けることで、継続的な関係性を築くこと」であり、必ずしも課金モデルを「定額制」にこだわる必要はありません。


なぜ今、「従量課金ハイブリッド」が戦略的に重要なのか?

近年、企業の多くが従量課金モデル、特にハイブリッド型へとシフトしています。その背景には、事業成長に不可欠な4つの戦略的理由が存在します。


1. 顧客価値との完全な一致(バリューベース)

顧客が「受け取る価値」と「支払う対価」を直結させる従量課金は、最も公平な価格モデルと認識されています。この「価値」の根幹となる指標はValue Metricsと呼ばれます。例えばHubSpot社は、価格設定を「ユーザー数」から「コンタクト数」というValue Metricsに転換し、顧客の成功(リード獲得)と自社の収益を連動させることで、純収益維持率を100%にまで向上させました。

2. 自然な収益拡大(NRR向上)

顧客のビジネスが成長しサービスの利用量が増えれば、それに比例して自社の収益も自動的に増加します。これはNRR(売上継続率)を向上させる強力なドライバーとなり、実際に従量課金モデルを採用する企業は、純粋なサブスクリプション企業よりも高いNRRを示す傾向にあります。

3. プロダクト主導の成長(PLG)との高い親和性 

近年、トップダウンの承認なしにエンドユーザーが試用・導入するPLG(Product-Led Growth)戦略が主流になっています。初期導入のハードルを劇的に下げる「小さく始めて大きく育てる」ことが可能な従量課金は、このPLGと非常に相性が良いモデルです。

4. 市場環境の変化への適応 

顧客はより柔軟な支払いモデルを求める傾向があり、固定費となる定額課金よりも従量課金が選ばれやすくなります。海外の調査では、SaaS企業の61%が何らかの形で従量課金を採用しているとされており、この流れは今後さらに加速していくとされています。



収益を最大化する「従量課金ハイブリッドモデル」

定額課金の収益安定性と、従量課金の成長性を両立させる「ハイブリッドモデル」は、現代のビジネスにおける最も強力な料金モデルの一つです。このモデルは、定額課金のデメリット(機会損失)と従量課金のデメリット(収益不安定)を互いに補完し合う、非常に合理的な料金設計です。


【主なハイブリッドモデルの設計パターン】

ハイブリッドモデル特徴と主な採用例                 
超過従量課金制基本料金に一定の利用枠を設け、超過した分だけ従量で課金する最も一般的なモデル。カラクリ株式会社では、このモデルで超過料金の請求負荷を軽減し、アップセルの機会を創出しています。
段階制(ティア)従量課金利用量に応じて料金単価が段階的に変動するモデル。アイレット株式会社では、AWS利用料をベースにした10段階の複雑な料率テーブル計算をシステムで実現しています。
月額料金あり+完全従量課金制最低限の月額基本料金を確保しつつ、利用した分だけ追加で課金するモデル。タイムズカーシェアが代表例です。
超過定額課金制利用量が一定の上限額を超えるとそれ以上は定額になるモデル。「天井」があるためヘビーユーザーも安心して利用できます。



失敗しない料金設計のための戦略的5ステップ

効果的な料金設計は、感覚ではなくデータと戦略に基づいて行われるべきです。

1. 価値指標(Value Metrics)の特定
顧客が製品の何に価値を感じ、その価値が何によって増大するのかを定義します。これは単なる利用量ではなく、「顧客への提供価値拡大のドライバーとなる指標」でなければなりません。

2. 顧客セグメントとペルソナの定義
ターゲット顧客を分類し、それぞれのペルソナがどのような課題を持ち、どの価値指標を重視するかを明確にします。

3. 課金モデルの選択と組み合わせ
価値指標とペルソナに基づき、最適な課金モデル(完全従量、ハイブリッドなど)を設計します。

4. 価格設定とシミュレーション
競合分析やコスト構造を基に具体的な価格を設定します。重要なのは、複数の価格モデルで「どのプランなら顧客離れを防ぎ、どれだけの売上が見込めるか」をシミュレーションすることです。

5. 継続的な分析と改善
料金設計は一度決めたら終わりではありません。顧客の利用データやフィードバックを基に、定期的に料金体系を見直し、最適化し続けることが不可欠です。


事業フェーズと業界特性から考える料金体系

最適な料金体系は、すべてのビジネスで共通ではありません。自社の事業フェーズ、ターゲット顧客、業界の特性を見極め、戦略的にモデルを選択することが成功の鍵となります。

創業期・新規事業フェーズ

サービスの認知度が低く、まずは多くのユーザーに価値を体験してもらうことが最優先のフェーズです。この段階では、導入障壁を下げることが重要になります。推奨モデルは以下です。

フリーミアムモデル
基本機能を無料で提供し、利用習慣を定着させた上で有料プランへ誘導するモデルです。

純粋な従量課金モデル
「使った分だけ支払う」ため、顧客は低リスクでサービスを試すことができます。特にPLG(プロダクトレッドグロース)戦略との親和性が高いモデルです。

成長期・拡大フェーズ

プロダクトの価値が市場に認知され、顧客基盤が拡大してきたフェーズです。この段階では、安定した収益基盤を確保しつつ、顧客の成長に合わせて自社の収益もスケールさせることが求められます。推奨モデルは以下です。

ハイブリッドモデル(定額課金+従量課金)
定額の基本料金で収益の予測可能性を担保しつつ、利用量の増加に応じて従量課金で追加収益を得ることで、両モデルのデメリットを補完します。アップセルやクロスセルの機会も創出しやすく、NRR(売上継続率)の向上が期待できます。

業界特化型(Vertical)や特定ユースケース

提供するサービスの価値が特定の指標と強く結びついている場合、その指標を軸にした料金体系が有効です。推奨モデルと業界例は以下です。

インフラ/クラウドサービス
 従量課金モデル)データ転送量やストレージ容量など、リソース消費が価値に直結するため。

通信サービス
 従量課金モデル)データ通信量や通話時間など。

AI / 開発者向けツール
 従量課金モデル)APIコール数や処理されたデータ量など、利用量と価値が比例しやすい。

BtoBソフトウェア
ユーザー数課金・ハイブリッドモデル)利用する従業員数が増えることで価値が高まるため、ユーザー数課金が一般的です。さらに、特定の機能やサポートレベルに応じてプランを分ける「階層制」や、超過利用分を従量課金とするハイブリッドモデルも多く採用されています。


ハイブリッドモデルがもたらすバックオフィスの課題

戦略的に優れた料金モデルを設計しても、それを支える業務オペレーションが追いつかなければ意味がありません。特にハイブリッドモデルは、従来の定額課金にはない複雑な課題を生み出します。

構造的な課題
見積から収益管理までの販売プロセス全体のデータチェーンが分断され、手作業での連携が必要になる。

業務現場での課題
フロントオフィスでは、顧客ごとに異なる複雑な見積作成が手間となり、属人化する。バックオフィスでは、 契約・請求などのデータが紐づかず、Excelやスプレッドシートでの管理が限界に達する。特に、段階型や超過料金など複雑な従量計算を手作業で行うことになり、誤請求リスクが増大します。

経営レベルでの課題
正確な収益状況をリアルタイムに把握できず、意思決定に遅れが生じます。請求ミスは顧客満足度を損ない、解約につながる可能性があります。


複雑な料金設計と事業成長を支える販売・請求管理システム「Scalebase」


これらの複雑な課題を解決し、戦略的な料金設計を事業成長に繋げるためには、ハイブリッドモデルに標準対応した販売・請求管理システムの導入が不可欠です。「Scalebase」は、サブスクリプションビジネス特有の複雑な販売プロセスを最適化・効率化するために設計されたクラウドシステムです。

柔軟な料金モデル設計への標準対応
単発、定額、従量、多段階従量、日割り、複合商材など、あらゆる料金モデルを標準機能で表現可能です。

販売プロセスの一元化と自動化
見積、契約、請求、売上管理までを一気通貫で管理し、データの分断を防ぎます。

データドリブンな経営判断を支援
MRRやチャーンレート、LTVといった重要KPIをリアルタイムで可視化。蓄積された顧客データを分析し、アップセルなどの施策へフィードバックするサイクルを構築支援します。

事業成長を止めないスケーラビリティ
新しい料金プランの追加や価格改定も迅速に行え、市場の変化に即応できます。


「Scalebase」は、複雑な従量課金の計算・請求管理を自動化し、業務効率化と事業成長を支援するパートナーです。より正確で効率的な請求業務フローを構築したいとお考えの担当者様は、ぜひ一度「Scalebase」の資料をご覧ください


まとめ

ビジネスが持続的に成長するためには、画一的な定額課金という固定観念から脱却し、顧客価値と収益性を両立させる戦略的な料金設計が不可欠です。その鍵となるのが、定額課金の安定性と従量課金の成長性を兼ね備えた「ハイブリッド」モデルです。

しかし、その柔軟性と引き換えに、バックオフィス業務は複雑化します。この「戦略」と「実行」の両輪を回すためには、それを支える強力なシステム基盤が欠かせません。

Scalebase」は、貴社の戦略的な料金設計をスムーズに実現し、事業成長を加速させるパートナーです。複雑化する契約・請求管理に課題をお持ちの事業責任者様、経営者様は、ぜひ一度資料をご覧ください。



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