2024.12.13

前受収益とは?仕訳の方法、混同しがちな勘定科目、発生しやすい業種について解説!

前受収益は、サブスクリプションや金融・不動産業など、商品やサービスの代金を前もって受け取る際に使われる勘定科目です。ここでは、前受収益の仕訳方法や混同しやすい勘定科目、前受収益が発生しやすい事業についても解説しました。


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目次
前受収益は?
ワンイヤールールの適用と長期前受収益
前受収益の仕訳例
前受収益が発生しやすい事業
その他の勘定科目との違い
ストックビジネスのための販売・請求管理システム「Scalebase」


前受収益とは?

前受収益とは、将来提供するサービスや商品の対価を、提供前に受け取った際に計上する勘定科目です。家賃、保険料、サブスクリプション利用料など、継続的に提供が行われるサービス・商品で主に発生します。

収益は、サービスや商品の提供が完了したタイミングで計上されるため、提供前に受け取った代金はその時点で収益としては扱いません。そこで、お金の動きと計上する収益や費用のタイミングが異なった場合に、そのズレを調整する経過勘定として前受収益を用います。

また、前受収益は貸借対照表では負債として処理します。これは、代金を受け取ったことで、将来的にサービスや商品を提供する義務(負債)を負っているためです。同時に、何らかの理由でサービスや商品の提供ができなくなった場合には、前受収益を返金する必要もあります。


ワンイヤールールの適用と長期前受収益

前受収益を貸借対照表に記載する際には、ワン・イヤー・ルールと長期前受収益の概念が重要です。

①ワン・イヤー・ルール(1年基準)の適用

ワン・イヤー・ルールとは、流動資産と固定資産、または流動負債と固定負債を区分する基準です。このルールに基づき、決算日から1年以内に現金化される資産や支払期限が到来する負債を流動項目に、1年を超えるものを固定項目に分類します。

そして、前受収益がワン・イヤー・ルールの適用を受けるかについては、その収益が主たる営業活動に関連しているかどうかで判断します。前受収益が営業活動に直接関係する場合は、正常営業循環基準(企業会計原則において、正常な営業サイクルの中にある資産や負債は流動資産や流動負債にするという基準のこと)が適用され、商品やサービスの提供が1年以上先であっても流動負債として計上されます。


②長期前受収益

長期前受収益は、前受収益のうち、決算日から1年を超える期間を経て収益化されるものを処理するための勘定科目です。ただし、長期前受収益となるものは、ワン・イヤー・ルールの適用を受け、固定負債に計上されたものとなります。

長期前受収益は、毎年の決算において、前受収益に振り替えを行います。
この振替により、流動負債としての前受収益と固定負債としての長期前受収益が貸借対照表上、適正に表示されます。例えば、会社の資金繰りが潤沢である理由の一つに長期前受収益(固定負債)が多いことが原因だと分かれば、流動負債だけであるより安定性が大きいと言えます。


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前受収益の仕訳例

サブスクリプションサービスを提供する会社の前受収益の仕訳例を解説します。
例として、会計年度が4月1日~翌3月31日で、10月1日に年払い料金として60,000円を受け取った場合を考えます。

①受取時

受取時には、下記のような処理を行います。                 

借方貸方
現預金60,000売上60,000


②決算時

3月31日の決算時には、当期の収益でない分を前受収益(負債)の勘定科目に切り替えます。今回の例では10月1日に年払いで受け取った代金のうち、翌4月1日~9月30日の分が翌期に該当するため、60,000円の半額(30,000円)を前受収益(負債)として計上します。

借方貸方
売上30,000前受収益30,000


③翌期首

決算時に前受収益(負債)として計上した分を、翌期首に再振替しなければなりません。そのため、決算時と反対の計上を行います。 

借方貸方
前受収益30,000売上30,000

前受収益は、契約に従って受け取った代金のうち、翌期以降に充当されるものは当期の収益から除外して計上します。損益計算書に影響を与えるため適切な期間配分、管理を行うことが重要です。




前受収益が発生しやすい事業

前受収益はがよく発生するのは以下のような業種です。業種によっては全く発生しないものですが、新規事業でサブスクリプションビジネスを始める場合は注意が必要です。

金融業

金融業での主な発生要因は、未経過の受取利息です。例えば、顧客に融資を行った際、その利息を前もって受け取ることがあります。この利息は融資期間にわたって収益として認識されるため、前受収益として計上されます。

②不動産業

不動産業では主に、未経過の受取家賃が発生要因になります。多くの不動産取引では、賃貸契約時に家賃を前払いすることが一般的です。例えば、1年分の家賃を一括で受け取った場合、その家賃収入は契約期間にわたって徐々に収益として認識されます。

③保険業

保険業では、未経過の受取保険料が主な発生要因です。多くの保険契約では、保険料を年単位で前払いすることが一般的です。この場合、前払いされた保険料は契約期間にわたって収益として認識されるため、未経過分は前受収益として計上されます。

④サブスクリプションサービス

サブスクリプションモデルでは、顧客がサービスを一定期間利用するために月単位や年単位で料金を支払います。例えば、サブスクリプションサービスを年払いする場合、その収益は提供期間にわたって認識されるため、未経過分は前受収益として計上されます。


【関連記事】BtoBサブスクリプションが進む業種や、従来型ビジネスとの違いなどを詳しく解説!


その他の勘定科目との違い

前受収益と似ている科目に「前受金」と「仮受金」があります。

会計処理にあたって混同しやすいため、それぞれ簡単に解説します。

①前受金

前受金は、商品やサービスを提供する前に取引先から代金を受け取った場合に用いられる勘定科目です。まだ提供していないサービスや商品に対して支払われる代金という面では前受収益と同じですが、前受収益がサービスの提供を「継続的」に行うのに対し、前受金はサービスの提供を継続的に行うわけではなく、時の経過とともに収益に計上されるものではないのが特徴です。例えば以下のようなケースが前受金として処理されます。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

・例えば、不動産取引や高額な商品の販売において支払われる手付金や頭金
・受注販売などで商品を製造する際に、前もって支払われる代金の一部

なお、前受金もサービスや商品をまだ提供していない状態のため、負債としての計上になります。例えば、200万円の受注のうち50万円を手付金として受け取った場合、下記のように計上します。
                       

借方貸方
現預金(資産)500,000前受金(負債)500,000


その後、納品が済んだ時点で、前受金を売上として計上します。前受収益は、サービス提供期間にわたって徐々に収益として認識されますが、前受金はサービス提供や商品の引き渡し時に収益として認識されます。

借方貸方
前受金(負債)500,000売上(収益)2,000,000
売掛金(資産)1,500,000


②仮受金

仮受金は、取引先から受け取ったお金の内容が不明確で、最終的な処理を確定できない場合に一時的に使用する勘定科目です。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

・取引先からの入金額が請求額と異なり過不足がある場合
・予定されていない入金があった場合

仮受金は取引先とのやりとりが丁寧に行われていれば発生しないものであり、仮受金が発生する状態は好ましくありません。また仮受金は一時的な処理のための勘定科目であり、決算時期までには内容を確認のうえ、正しい勘定科目へ振り替える必要があります。仮受金のまま残ってしまった場合、最終的には「雑収入」として処理されることがあります。

なお、請求額10,000円に対し、100,000円入金があった場合には、下記のように計上します。

借方貸方
現預金(資産)100,000売上(収益)10,000
仮受金(負債)90,000


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継続課金ビジネスの販売戦略・プライシング戦略に最適化された販売・請求管理システムとして、BtoB継続課金ビジネスを展開する200社以上の企業に導入いただいています。


まとめ

前受収益は、金融業や不動産業、サブスクリプション事業など、代金を前もって受け取るビジネスで頻出する勘定科目です。前受収益は業種によって全く発生しない場合もありますが、サブスクリプションビジネスなど新たな事業を展開する際には特に注意が必要です。

Scalebaseでは、サブスクリプション、継続課金の販売・請求管理を一気通貫で行います。サブスクリプション事業でお悩みの方は、ぜひScalebaseにお問い合わせください。


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