2024.2.14

従量課金を検討する際の落とし穴と解決策【イベントレポート】

SaaSのプライシングは毎月決まった額を請求する、いわゆる「サブスクリプション」モデルが主流でしたが、近年利用した分だけ費用が発生する「従量課金」モデルが増えています。

本セミナーではSaaS企業のプライシングを支援してきたプライシングスタジオの相関氏と、サブスク・従量課金を成功に導く販売・請求管理「Scalebase」を提供するアルプの毛利氏が登壇し、従量課金モデルを検討する際の落とし穴と解決策についてお話しました。


目次
1.SaaSプライシングの現状
2.従量課金と定額課金の比較
3.従量課金検討時の落とし穴
4.価格改定時に気をつけるべきこと
 4-1.社内外への丁寧なデリバリー
 4-2.オペレーションフローの構築
5.従量課金ビジネスを支援するサービスの紹介
 5-1.プライシング実行支援と組織化支援のプライシングスタジオ
 5-2.継続課金ビジネスにおける販売・請求管理は「Scalebase」



登壇者紹介


相関 集(あいぜき つどい)
プライシングスタジオ株式会社・取締役COO

前職では株式会社サイカにて広告分析SaaSのプロダクト責任者として、事業成長を推進。現在はプライシングスタジオ株式会社にて、プライシングコンサルティングおよびプロダクト開発を通じて、顧客の価格成功を支援。


毛利 悠記(もうり ゆうき)
アルプ株式会社・執行役員 CRO

2009年に株式会社ワークスアプリケーションズに入社。ERPソフトウェア分野で大手企業担当を歴任。営業責任者として事業を牽引後に19年に「Scalebase」を提供するアルプ株式会社へ入社。以降、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスを中心としたビジネス部門を担当。


SaaSプライシングの現状


(相関氏)SaaSは、従来のインストール型がクラウドサービスへと移り変わることでできた世界です。所有(モノ)から利用(サービス)へと変化するに伴い、料金形態においても定額課金や従量課金が主流となり、そのなかでも利用状況を把握できるSaaSは利用量請求との相性がいいとされています。



(相関氏)SaaS事業者にとって、従量課金を選択するか定額課金を選択するかは重要な問題です。SaaS先進国の米国では、従量課金に近い拡張性のある価格設定を8割の企業が行っています。2021年のデータでは、利用量課金の利用率は39%、アカウント課金の利用率は41%です。利用量課金の採用は年々増加傾向にあり、企業規模に依らず用いられています。



(毛利氏)日本でも、IT技術の進化に伴い、最近まで継続課金に全く縁がなかったような企業も継続課金ビジネスに取り組みだしていると実感しています。当社のお客様も、80%以上が従量課金に近しいプライシングモデルを取っています。また、顧客のニーズに合わせて価値提供を行える従量課金には、顧客に納得して金銭を支払ってもらいやすいという利点があり、企業規模に関わらず創業期から採用する企業も多いです。


従量課金と定額課金の比較


(相関氏)従量課金と定額課金について詳しく比較していきます。比較する際によく聞く論点は、収益、チャーンレート、新規顧客の獲得しやすさ、アップセルのしやすさ、キャッシュフローなどです。


(相関氏)まず、収益の観点では、従量課金採用企業の方がARPAの伸びが高くなる傾向があります。



(相関氏)チャーンレートの観点では、従量課金採用企業の方が解約を抑えられています。



(相関氏)新規顧客獲得の観点では、使用量に応じて価格を決められる従量課金の方が、より幅広い支払意欲を取り込める点でポジティブです。しかし、使用量がわからないと会社で稟議に上げられないという問題も生じるため、完全従量課金にはネガティブな側面もあります。

(毛利氏)これについては、ユーザーの予算編成と予算執行を理解したうえで、例えば、契約時に一定額を請求し、使用量に応じて翌年に追加請求を行うなどの形で対処することは可能です。ただし、料金モデルや請求日の柔軟性、複雑な請求を実現するためのオペレーションやシステムも重要になります。



(相関氏)アップセルのしやすさの観点では、アップセル提案にコストがかかり確実性もない定額課金と比べて、完全従量課金は顧客の利用量に応じて課金額が増加するためシームレスなアップセルが可能です。ただし、従量課金と定額課金のハイブリッド形式を採用する場合は、どのような料金プランを組むかが鍵となります。



(相関氏)キャッシュフローの観点では、年間一括請求を行える定額課金の方が期待値が高いです。ただし従量課金の場合でも、最初に一定額を請求し、使用量に応じて後から追加請求を行うなど、請求方法によっては懸念点を解消可能です。




(相関氏)従量課金と定額課金のどちらを採用するかは、どちらにも長短があるためバランスが重要です。なお、最も収益が伸びるのは従量課金が収益の25%までの価格とも言われています。


従量課金検討時の落とし穴


(相関氏)従量課金検討時の最大の落とし穴は、事業に適さない誤った従量課金軸を設定してしまうことです。ここを誤ると、利用が増えても売上に結びつきません。更に、そもそも購買してもらえないという問題も生じます。商習慣や自社のサービス価値を考慮して設定することが重要です。

ビジネスマッチングアプリを例に考えます。従量課金軸として、閲覧人数やマッチ数、送信数、利用時間が考えられます。しかし、利用時間は計測が難しいため、従量課金軸として不適切です。そのようなものは除外します。



(相関氏)従量課金軸候補が決まったら、調査もしくは推計し、顧客の支払意欲との関係を把握します。そうすることで、より適した従量課金軸が定まります。



(相関氏)最後に、調査結果に基づいて料金プランを設定します。従量課金軸が提供価値に適切かどうかという観点で考えることで、課金軸検討から価格設定まで一気通貫で行えます。従量課金導入の際は、価値検討が最も肝要です。




価格改定時に気をつけるべきこと


(毛利氏)既に定額課金で提供を行っている企業が従量課金を導入する場合には、既存顧客について考えるのはもちろんのこと、ガバナンスやチーム、オペレーション、ツールといった、組織能力についても考える必要があります。



社内外への丁寧なデリバリー

(毛利氏)社内外のデリバリーによるリスクは、Sales/CSからの反発、Churnの増加、受注率の増加が考えられます。告知時期や改定の理由、それを発表するチャネルについても事前に充分に検討し、余裕を持った丁寧なデリバリーを行うことが重要です。また、価格改定は、部門を跨いで様々なオペレーションに影響があることも頭に入れておきましょう。




オペレーションフローの構築

(毛利氏)従量課金には変動従量、階層型などさまざまな料金モデルがあります。料金モデルに基づいたデータを自社サービスから取り出し、計算ツールを選択しなければなりません。キャンペーンや値引きなど、顧客ごとのイレギュラーへの対応も求められます。実現可能なオペレーションフローの構築と、ツールの検討を予め行い、価格改定に対応しやすい体制を整えることが重要です。



従量課金ビジネスを支援するサービスの紹介

プライシング実行支援と組織化支援のプライシングスタジオ


(相関氏)プライシングスタジオは、プライシング実行支援と組織化支援を行っています。目の前の価格を良くしたいという短期課題と、価格をつけられる組織をつくりたいという長期課題のどちらにも対応しています。ビジネス整理・分析から、価格への落とし込みまで、一気通貫でサポート可能です。価格についてお悩みの際は、ぜひご相談ください。




継続課金ビジネスにおける販売・請求管理は「Scalebase」

(毛利氏)アルプは、サブスクリプションや従量課金といった、継続課金性の高いビジネスの販売・請求管理が行える「Scalebase」というSaaSを提供しています。

「Scalebase」は営業が用いるSFAやCRMと会計システムの間を繋ぐサービスです。課金ロジックの計算や請求業務、データ集計も全て自動で行えます。実際にご使用いただいているお客様からは、従量課金を取り入れるにあたって複雑になった料金計算と工数の負担を解消できたとの声や、料金プランが混在する場合の管理がしやすくなったとの声をいただいています。(事例はこちら

請求管理業務への負担が減れば、より戦略性の高い業務に時間を使えます。継続課金でお悩みの方はぜひご相談ください。


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